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JAN:9784062156127
●内容
2009年7月16日。元公安調査庁長官である緒方重威氏に、東京地裁は懲役2年10月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。天皇の認証官である高検検事長まで務めた検察の最高幹部に有罪が言い渡されるという、司法の歴史において前代未聞の出来事となった――。
朝鮮総連本部ビルの売却話に乗じて、総連から4億8400万円を騙し取ったとして「詐欺」の罪に問われた緒方氏。しかし、朝鮮総連サイドにカネを騙し取られたという意識のない「被害者なき犯罪」に、エリート検事はいかにして巻き込まれていったのか。
過激派が暴れ回った学生運動華やかなりし時代、「東アジア反日武装戦線」による連続企業爆破事件の捜査、そしてよりによって天皇をターゲットにした列車爆破計画の存在、そしてオウム真理教に対する破防法に基づく団体規制請求の取り組み……。父子二代にわたって公安部門担当の検事として奉職した緒方氏が、「公安検察」の歴史を振り返りながら、ともに詐欺罪で起訴された不動産ブローカーに甘い蜜を吸わされ、一気に絡め取られる様、そして、朝鮮総連の不動産案件に関与していく様を自身の反省と共に記していく。
これは数多ある刑事被告人による検察批判本とは一線を画した自省録である。検察組織のエリート中のエリートで、王道を歩んできた緒方氏ゆえの脇の甘さを、自身の記録と記憶によって、現役検事さながら徹底的に明らかにしていく。一審有罪判決を受けた緒方氏が、すべてを思い切って告白している点が最大の見所である。リスクが高いことを承知しておきながら、なぜ緒方氏は朝鮮総連の案件に関わろうとしたのか――。北朝鮮外交が袋小路に入った現状にあって、緒方氏の意図と思いは、彼の国との関係を考える上で新たな視座を与える。