岡氏は「人間の真実」をテーマに、長年にわたり女性像を中心とした作品を描き、表層と内実の違いを浮き彫りにする葛藤を通じて人間の本質を追求しています。写実技法を用いて無から有を生み出す実感を追求し、観る者に人間の本来の姿を問いかける作品を制作しています。現在、一般社団法人新構造社の委員としても活動しています。

岡氏はその才能を認められ、2008年には新構造展で文部科学大臣賞を受賞、2015年には新構造展新構造賞を受賞するなど、多くの名誉ある賞を受けています。また、一般社団法人新構造社の委員としても活動し、洋画界における重要な役割を果たしています。

岡啓介「あれから」ボードに油彩 6号 2022年作 共シール
本作品は、静かで詩的な雰囲気の中に深い物語性を感じさせる作品です。画面に描かれた女性は、柔らかな光に包まれた美しい顔立ちと優雅な佇まいが印象的で、どこか遠くを見つめるその表情は、過去の出来事や記憶を静かに振り返っているように感じられます。伝統的な着物の柄や質感、そして背景の穏やかな色調が調和し、作品全体に日本らしい美意識が漂っています。また、岡氏の写実技法による細部へのこだわりが、女性の繊細な肌の質感や陰影、目元や口元の表情を際立たせ、見る者に彼女の内面の静かな強さや優しさを想像させます。

タイトル『あれから』が示唆するように、この作品は観る人それぞれの記憶や感情を呼び起こし、時間の流れや人間の本質について問いかけるような深いテーマ性を持っています。この作品は、ただの美しい女性像にとどまらず、岡啓介氏が追求してきた「人間の真実」を表現する一枚として、多くの人々の心を惹きつけるでしょう。画伯の美人像の名画です。